道路付帯施設の移設対応マニュアル|標識・街路灯・排水施設

この記事の監修者

リキ・トラフィック企画 有限会社
エグゼクティブ・アドバイザー
戸張 昌弘

警視庁勤務32年
 警視庁本部(交通規制課)在籍10年
(標識・標示 設計、管理等担当)

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「道路標識や街路灯の移設が必要になったけれど、手続きの方法がわからない…」「移設にかかる費用の相場って?」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。

道路付帯施設の移設は、店舗開発や道路改良工事において重要な課題となります。特に、行政協議や技術的な検討、適切な工事業者の選定など、様々な観点からの準備が必要です。

この記事では、道路付帯施設の移設を検討されている方に向けて、

  • 施設別の移設手続きと実務のポイント
  • 移設費用の目安と工期の考え方
  • 行政協議を円滑に進めるコツ

上記について、具体的なノウハウを解説しています。

道路付帯施設の移設は複雑な手続きを伴いますが、正しい知識があれば適切に進めることができます。この記事を読むことで、スムーズな移設計画の立案に必要な実践的な知識が身につきます。ぜひ参考にしてください。

目次

道路付帯施設の移設に関する基礎知識

移設検討が必要な道路付帯施設とは

最も一般的なのが道路標識類で、特に店舗進入路に近い位置にある規制標識や案内標識が対象となります。次いで多いのが街路灯で、照度基準を満たしながらの移設検討が必要です。

排水施設では、車路計画や駐車場配置の支障となる雨水桝や汚水桝が代表的です。その他、バス停の上屋や標識、道路情報板なども、店舗のファサード計画や敷地利用計画の制約となる可能性があります。これらの施設は道路管理者との協議が必要で、移設の実現性を早期に確認することが重要です。

施設別の移設難易度と注意点

道路標識は難易度が比較的低く、基礎の打ち替えと設置工事が主な作業です。ただし規制標識は警察協議が必要で、新設位置の視認性確保が重要です。街路灯は配線工事が加わるため難易度が中程度で、夜間の必要照度維持が課題となります。

最も難易度が高いのは排水施設で、周辺への影響や接続管の勾配確保が重要です。特に汚水桝は臭気対策も必要です。また、複数の施設が近接している場合は、移設の優先順位や工程調整が重要なポイントとなります。いずれの施設も、早期の現地調査と道路管理者との協議が不可欠です。

移設可否の判断ポイント

まず技術的な観点として、新設位置での構造的な成立性や、周辺インフラへの影響を確認します。特に排水施設の場合は、勾配の確保や既存管路との接続性が重要です。次に法的な観点からは、道路構造令や各種技術基準との適合性、交通安全上の要件を満たすことが求められます。さらに、施工性の観点では、作業スペースの確保や夜間工事の必要性、周辺交通への影響なども考慮が必要です。

これらの要素を総合的に検討し、道路管理者との事前協議を通じて、移設の実現可能性を判断していきます。特に重要なのは、計画初期段階での綿密な現地調査と関係機関との協議です。

施設別の移設手続きと実務ポイント

道路標識の移設手順と申請方法

まず第一に、現地で標識の種類や支柱形式、基礎構造を確認し、道路台帳で設置経緯を調査します。次に、移設先の候補地について、視認性や安全性の観点から適切性を検討します。規制標識の場合は所轄警察署との事前相談が必須となります。

申請手続きでは、道路管理者に対して道路占用許可申請書および標識移設協議書を提出します。添付書類として、位置図、平面図、構造図のほか、交通処理計画書が必要です。警察協議が必要な場合は、道路使用許可申請も並行して行います。

なお、工事は原則として夜間施工となり、交通規制を伴うため、地域住民への事前周知も重要なポイントです。

街路灯の移設における照度検討と配線計画

街路灯の移設では、道路照明基準に基づく照度確保と、電気配線の適切な再配置が重要な検討事項となります。

まず照度検討では、移設後の配置が道路構造令の定める照度基準(交差点部で20ルクス以上、単路部で10ルクス以上等)を満たすことを照度計算で確認します。特に既存街路灯との配光バランスや照明の均斉度に注意が必要です。隣接照明との離隔距離は通常30~40mを目安とします。

配線計画では、既存の電源系統を把握した上で、ケーブルの引き直しルートを検討します。地中配管の新設が必要な場合は、他の埋設物との離隔確保や施工性を考慮します。また、分電盤の容量確認や、電圧降下の計算も重要なポイントです。

排水施設(雨水桝・汚水桝)の移設実務

排水施設の移設実務では、雨水・汚水の流下機能を確実に維持しながら、適切な施工計画を立案することが重要です。

まず現地調査で、既存桝の深さ、接続管の管径・勾配、周辺の埋設物状況を詳細に把握します。移設計画では、排水系統の連続性を保ちながら、管路勾配(汚水は最小1/100、雨水は1/200程度)を確保できる新設位置を決定します。特に汚水桝では、臭気対策として防臭蓋の採用や十分な封水深の確保が必須です。

工事では、仮設排水による流下機能の維持や、掘削時の地下埋設物保護が重要です。また、桝の据付精度や管接続部の水密性確保など、施工品質の管理も不可欠なポイントとなります。

移設協議のコツと行政対応のポイント

まず事前相談の段階で、移設の必要性や計画概要を簡潔に説明できる資料を用意します。特に公共性の観点から、移設後も道路施設としての機能が十分確保されることを説明することがポイントです。また、周辺住民や道路利用者への影響についても、具体的な対策を示すことで、行政側の理解を得やすくなります。

本協議では、技術基準への適合性を示す資料や、工事中の安全対策、維持管理性への配慮を詳細に説明します。また、類似の協議実績があれば、それらを参考事例として提示することで、協議がスムーズに進むことが多いでしょう。

現場で使える概算費用の目安

施設別の標準移設費用

道路標識の場合、小型の規制標識で30~50万円程度、大型の案内標識では基礎工事を含め100~200万円が標準的です。特に基礎が深い場合や、地下埋設物が輻輳する場所では追加費用が発生します。

街路灯の移設では、照明柱の規格や配線工事の内容により80~150万円程度となります。地中配管の新設が必要な場合は、掘削費用が追加で発生します。

排水施設は最も費用がかかり、雨水桝で150~200万円、汚水桝では深さや接続管の状況により200~300万円程度です。特に既設管の取り回しが複雑な場合は、大幅な増額となる可能性があります。

工事費の内訳と積算のポイント

道路付帯施設の移設工事費は、直接工事費、共通仮設費、現場管理費、諸経費の四つに大別されます。

直接工事費の主な内訳は、撤去費(既存施設の撤去・処分)、材料費(新設に使用する部材)、施工費(基礎工事、設置工事、配管・配線工事)です。また、交通誘導員費用や、建設機械のリース料も重要な費目となります。

共通仮設費には、安全対策費や仮設材料費が含まれ、現場管理費では技術者人件費や現場事務所費を計上します。諸経費は一般管理費等として、直接工事費の15~20%程度を見込みます。

積算のポイントは、夜間割増や交通規制に伴う施工効率低下を適切に見込むことです。

追加コストが発生しやすい条件

道路付帯施設の移設工事では、以下のような条件下で追加コストが発生しやすい傾向にあります。

第一に、地下埋設物が輻輳する場所での作業です。試掘調査費用が必要となり、さらに埋設物の防護工や迂回配管が必要になることで工事費が増加します。また、夜間作業が必要な繁華街や交通量の多い道路では、交通誘導員の増員や作業効率の低下により費用が膨らみます。

地盤条件も重要で、軟弱地盤での基礎工事や、岩盤が出現する場合は追加の掘削費用が必要です。また、近接する構造物への影響対策や、降雨対策、寒冷地での凍結対策なども、追加コストの要因となりやすいポイントです。

コスト削減のための実践テクニック

最も効果的なのは、複数の施設移設をまとめて発注することです。共通仮設費や交通規制費用の重複を避けられ、工事費を15~20%程度削減できます。また、既存の基礎や配管の一部流用を検討することで、掘削範囲を最小限に抑えられます。

施工方法では、昼間作業が可能な区間を見極め、夜間作業を必要最小限にすることが重要です。さらに、近隣で行われる他工事との工程調整により、仮設材料の転用や交通規制の共有化も可能です。

予備品の有効活用や、汎用材料の採用も、材料費削減の有効な手段となります。

工程計画と施工管理の要点

施設別の標準施工期間

道路標識の場合、小型の規制標識では2~3日程度で完了します。基礎工事1日、本体設置1日、既存標識の撤去半日が標準です。大型の案内標識では、基礎工事に2~3日、本体の組立・設置に2日程度を要し、全体で5~7日間となります。

街路灯の移設は、基礎工事2日、支柱建込み1日、配線工事1~2日で、合計4~5日が目安です。ただし、地中配管の新設が必要な場合は、さらに3~4日追加されます。

排水施設は最も期間を要し、雨水桝で5~7日、汚水桝では7~10日程度が標準です。特に、接続管の付け替えが必要な場合は工期が延びやすいポイントです。

申請から完了までの全体スケジュール

まず現地調査と計画立案に2週間程度を要します。その後、道路管理者との事前協議に2~3週間、正式な申請書類の作成に1週間が必要です。申請から許可取得までは、道路占用許可で2週間、警察協議が必要な場合はさらに2週間追加されます。

工事着手前の準備期間として、施工計画書の作成や地元調整に2週間、資材手配に2~3週間を見込みます。実際の工事期間は施設により異なりますが、1~2週間が標準です。

最後に完了検査や道路復旧までを含めると、申請から完了まで全体で2.5~3ヶ月程度を見込む必要があります。

天候や周辺環境への配慮事項

降雨時は、特に掘削工事や電気工事の安全性に影響が出るため、気象予報を確認した工程調整が重要です。また、強風時は、クレーン作業や高所作業の中止基準(風速10m/s以上)を設定し、徹底する必要があります。

周辺環境への配慮としては、騒音・振動の規制値遵守が基本です。特に夜間工事の場合、低騒音型建設機械の使用や、防音シートの設置が必要です。また、商業施設付近では、営業時間帯を避けた作業調整や、歩行者の安全確保のため必要に応じて誘導員を増員します。

粉じん対策として散水や清掃の徹底も重要です。

現場でよくある課題と対策

交通規制に関する課題

交通規制における主な課題は、渋滞対策と緊急車両対応です。渋滞対策では、交通量調査に基づく規制時間の最適化と、迂回路設定が重要です。緊急車両対応では、作業帯内に幅員3m以上の通行空間を確保し、消防署等への事前通知と緊急時の規制解除手順を明確化します。

近隣対応の留意点

近隣対応では、事前の工事説明と騒音・振動対策が重要です。特に、商業施設や住宅近接部では、作業時間帯の調整や低騒音型機械の採用を徹底します。また、苦情発生時の即応体制を整え、現場責任者の連絡先を周知することで、トラブルの早期解決を図ります。

施工品質の確保

施工品質確保のポイントは、重要管理項目の設定と確実な記録です。基礎工事では高さ・通り・深さの測点管理を徹底し、桝や管路では勾配・接続部の水密性を重点確認します。また、各工程の施工状況を写真で記録し、特に埋戻し前の配管状況など、後から確認できない部分の撮影を確実に行います。

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